実家「空き家」問題 ~売却のタイミングと法的・税務上の注意点~
皆様、本日は「実家が空き家になった際の最適な判断」についてご説明します。
☆深刻化する「空き家」問題と2つの選択肢☆
親が施設に入居したり、亡くなったりすることで、住む人のいなくなった実家が「空き家」となるケースが増えています。その際に、「いますぐ売却して現金化すべきか」それとも「相続まで親名義のまま維持すべきか」という難しい判断に迫られます。この2つの選択肢について、特に留意すべき「法的リスク」と「税制上のメリット」を解説します。
●法的リスク:親名義のまま維持する場合の落とし穴
実家を親名義のまま維持する選択をする場合、最大のリスクは「親の判断能力の低下」です。
認知症による売却不能:もし親が認知症などにより判断能力を失うと、実家の所有者である親自身が売買契約を結ぶことができなくなります。この状態になると、たとえ子どもであっても、勝手に代理人として売却手続きを進めることは法律上できません。売買契約は無効となります。結果として、介護費用などで現金が必要になった際、実家を売却することが困難になり、資産が凍結された状態に陥ります。
【対策】
成年後見制度と家族信託:売却を可能にするには「成年後見制度」を利用し、家庭裁判所が選任した成年後見人が、本人(親)に代わって法律行為を行う必要があります。しかし、より柔軟かつ迅速に対応するためには、親が元気なうちに「家族信託」を検討することが有効です。家族信託で子どもを受託者とすることで、親が将来的に認知症になっても、子どもの権限で実家を売却し、売却金を親の生活費や介護費用に充てることが可能になります。
家族信託とは?
信頼できる家族に財産管理を任せる契約です。
詳しくは下記の法務局の資料を参照ください。https://houmukyoku.moj.go.jp/kobe/content/001354479.pdf
●税制メリット:相続後の売却で得られる優遇措置
一方で、実家を急いで売却せず、「相続後に売却する」という選択肢は、税制面で大きなメリットがあります。
空き家特例(3,000万円控除)の活用: 相続した空き家(被相続人の居住用財産)について、一定の要件を満たし、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した場合、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が適用できます。
この特例が適用されると、譲渡所得(売却益)から最大3,000万円が控除され、大幅な節税効果が得られます。
譲渡所得税の税率優遇: 不動産を売却した際の譲渡所得税の税率は、所有期間によって異なります。
短期譲渡所得(所有期間5年以下):約39%
長期譲渡所得(所有期間5年超):約20%
相続後の売却では、親が所有していた期間もこの所有期間に通算されます。そのため、相続直後に売却しても長期譲渡所得の低い税率が適用されるケースが多く、税負担が軽減されます。
まとめ:空き家対策は「生前の話し合い」が鍵!!!
実家が空き家になった際の対応は、「現金化の必要性」と「税制メリット」のバランス、そして「親の判断能力」という3つの要素で決定されます。
最も重要なのは、親が元気で判断能力があるうちに、家族間で空き家になった後の対応(売却、活用、維持など)を話し合い、対策を講じておくことです。特に、将来的な柔軟な対応を確保するためには、家族信託の活用が有効な手段となり得ます。
実家は大切な思い出の場所であり資産であると同時に、将来の家族の負担ともなり得ます。
専門家にも相談しながら、最適な道筋を見つけましょう。